年月日 2024年5月29日(水) 晴れ
講座名:深泥池と京都府立植物園
講 師:竹門康弘先生(大阪公立大学国際機関教育機構客員研究員)
場 所:深泥池と京都府立植物園
地下鉄北山駅から徒歩10分ほど、市街地のすぐそばに深泥池は存在する。わずか9haの小さな池が3haの浮島を浮かべて14万年、10万年と存在し続けてきた。さらに太古から人がその恵みを享受し利用しながらも存続できたという、まさに奇跡的な池。前日の大雨が嘘のようなさわやかな風の吹く中、深泥池の観察が始まった。
まずは深泥池の歴史とその成り立ちについての説明を聞きながら、今の深泥池を観察。遠くに見える浮島はミズゴケが堆積してできた「高層湿原」で手前は新しく400年前、奥は数千年前に出来たものだという。浮島でジャンプすると目の前の水面が揺れるという。まさに浮島。なぜ腐らず堆積し続けることができたのか。夏は微生物が分解のために酸素を使い溶存酸素量がなくなり、冬は京都の底冷えで温度がぐっと下がるから。最近の調査で謎が解けたらしい。浮島は夏に浮かび、冬に沈むという浮沈活動をすることで多様な生態系を支えているのだとか。さらに水面に見える網やもんどりは外来種を捕まえるもの。そして水面の水草や藻の分かれ目が意味するものは?事前にもらっていた資料で学習してきた受講生が「○○です」と答え、先生の「正解!」をもらう。また、すぐ目の前にアオサギが獲物を狙っている。今2羽が住みついていて、ザリガニやカダヤシなどの外来種をせっせと駆除してくれているとのことだ。岸辺の湿地を観察しているとシカの足跡やオオバナノイトタヌキモ(外来種)やジュンサイを見つけた。かの魯山人をもうならせたという絶品のジュンサイ。保護管理のおかげか、今は増えすぎて年に数回、間引いて処理しなければならないとか(もったいない)。
次に池の横の森の中へ。かつては段々畑があり、里山として日々の生活に密着して利用されていたが薄暗い森に。足元には処理されたオオバナノイトタヌキモと茎を切られたジュンサイの根が山盛り!?のはずがジュンサイだけがない。ここにも○○の足跡が、これは今まで気づかなかった大発見だと写真を撮る先生。浮島を寝床に絶滅危惧種を食い荒らすだけでなく、生ごみ処理をしてくれていたことに驚き(笑い)。
次に浮島がよく見える場所に移動。水面にたくさんの稚魚、カムルチ(雷魚)で外来種といえども縄文時代からいたとか。遠くに目をやると水面にヒメコウホネの黄色い花が見える。絶滅危惧Ⅱ類の希少品種。またタヌキモは深泥池にしかない絶滅危惧種で深泥池には食虫植物が多く、水中食虫植物は15種もあり、陸上のモウセンゴケも多く花を咲かせているという。これもまた深泥池の水質が古くから“酸性で貧栄養”であるからこそだとか。富栄養の水辺では競争に負けてしまうような動植物も、また外来種であってもすべてを受け入れる懐の深さがあったからだと説明を受け、なぜか深泥池が尊く愛しく感じた。
10万年以上も続いてきたこの豊かで貴重な生態系を未来につないでいくには?
「深泥池の現状・変化を知り、適切な管理方法を選択するためには、保全の基本方針と日々のモニタリングが不可欠。深泥池の価値を知り、保全の基本を理解し、そのうえで保全から得られるメリットをうまく人に還元することが大切だ」と。
かつて自然と生活が密着にかかわっていた里山生活のように、深泥池からの恵みも有効利用しながら、その環境を整え、更に共存し続けていくことが大切なのだと学んだ。
午後からは京都府立植物園を見学。ガイドさんの見せたいものがあるというの熱い思いで、時間を1時間30分に延長していろいろ紹介してもらった。午前午後ともに熱心に聞く受講生の姿が講師やガイドさんにも伝わったのだと、すべてに感謝感謝!お疲れさまでした。(K・T)
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