年月日:2024年11月20日(水) 晴れ
講座名:奈良公園の巨樹観察 ②
講師:甲斐野幸一先生
場所:春日山原始林北部歩道・若草山
春日山は春日大社の神域として守られ、照葉樹林が保存されてきた原始林である。
春日大社本殿前から出発してすぐに、規則正しく植栽され明るく向こうが見通せる木立を観察した。後で原始林と比較するためである。次に平城京の1万人の生活を支えた貴重な水、春日山を水源とする神聖な水谷川の流れと水谷神社について説明を受けた。
遊歩道を進み。急な斜面の浅い土壌で生きている大木の根の様子や木肌に地衣類をつけて弱った大木、あちこちで立ち枯れの木や倒木が照葉樹林の中に混在している様子を観察した。一方シキミ、ナギ、ナンキンハゼなどの本来の植生ではない木々が、シカが食べない木であることから生育範囲を広げていた。シカは手厚く保護されているせいか、森を構成する木々の葉や若木、下草を食べるので、森が変化し、シカが食べない木々や植物が残されているそうだ。試験的にフェンスで囲み、中と外の下草や若木の様子を比較している所では、明らかにフェンスの中で生き生きと植物が生育していた。
また、カシノナガキクイムシが要因となりシイ、カシ類に被害が発生し、立ち枯れや倒木の原因となっている。歩道に近い場所では、事故防止のために薬剤注入済の大木に、印のリボンが巻きつけられ注入回数などが記録されていた。ガイドをお願いした巨樹の会においても調査や保全活動が行われているそうである。維持管理には大変な苦労を要することを知った。
若草山山頂での昼食の後、春日山の深い谷筋や三笠山を眺めた。所々にムクロジ、ケヤキなどの紅葉が見られ、眼下にドングリ、クスノキ、スダジイ、ツクバネガシなどの深い原始林を見ることができた。
大仏殿や奈良盆地の景色を楽しんだ後、足元に注意しながら長い石段を下り全員無事に下山した。
見上げるとススキとナンキンハゼの紅葉が斜面を美しく彩っていた。 E.H
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