石ころ部会の7月活動報告

月 日:R5年7月28日

場 所:河内長野市 滝畑ダム

参加者:28人

活動内容:

連日の猛暑にめげず、28名が滝畑ダムサイトに集合。目的は滝畑ダム管理事務所による見学ツアーである。先ずは管理事務所内でダムの概要説明を聞く。このダムは石川流域の治水、灌漑用水の確保、河内長野・富田林両市の上水道水源確保を目的に、9年の歳月をかけて1982年に完成。堤高62m、堤頂長120.5mは府下最大。

 次いで見学用ヘルメットを装着し、ダムの堤体上部に向かう。堤体の谷側にある急勾配の階段を監査廊出入口のある広場まで44m下りる。谷の東側にみえる摩崖仏を拝んで一息、堤体内部の監査廊に入る。内部の寒暖計を見れば17度、肌寒い。コンクリート壁全面には無数の水滴がみられ、天井には鍾乳石のつらら(コンクリートのセメントに含まれる石灰分が溶けてできた)が、床面には石筍が形成されている個所もある。廊内にはダムの傾きや、コンクリート壁からの漏水、ダムの基礎部からの湧水などの程度を測る様々な計器が配備されている。廊内の階段を上がると取水バルブ室、更に上がると満水時放流の為の放流ゲート室がある。階段はまだまだ続く。最後の力を振り絞って漸く監査廊の上部出入口に到達し、外に出る。そこから外階段を上がって堤体上部横にあるトンネル内に入る。トンネル内では僧房酒が、ダムの湖底では他の天野酒が熟成保存され、ふるさと納税の返礼品となるのだそうだ。体力勝負の見学ではあったが、管理事務所の説明や対応も行き届いており、貴重な学習の場となった。見学後はダム湖の管理道路を少し歩いて東屋のある休憩所で昼食をとる。市街地ほどでないにしても、谷の猛暑も耐え難く、周辺の地質観察は諦めて帰途に就いた。

 

石ころや地質に関わるポイント:

l 滝畑地区は領家帯花崗岩、泉南流紋岩類、和泉層群の泥岩、砂岩、礫岩などが分布しており、これらを横切って石川が南から北にV字谷をきざんで流れている。

l ダム付近の岩盤は半花崗岩(アプライト)である。滝谷周辺に広く分布している花崗岩とは少し異なり、黒雲母を含まない白色等粒状の岩石であるとのこと。

l 小生はダムの岩盤と夕月橋付近の露頭の2か所から岩片を採取し、持ち帰って比較してみた。前者は自宅の研磨機で汚れを落として観察すると石英と長石のみの等粒状結晶が殆どであり、黒雲母等の有色鉱物は全く見られないことから半花崗岩であることが確認できた。後者は黒雲母や角閃石を含んだ通常の花崗岩であった。(写真参照)

l 監査廊内の床面に形成された鍾乳石は高さ10㎝程度に育っていた。ダム構築40年後の成長の証である。因みに特別天然記念物である秋芳洞の石柱は10万年前~100万年前できた石灰岩の洞窟に地下水が浸透してできたもの。ダムの場合、コンクリート中のセメントが石灰分を含むために起こるものであるが、その形成スピードは天然の洞窟環境で作られるよりもずっと速いそうである。(I.S.)